ローマ教皇に特別謁見した話と【漢魂プレミアムスモーク5種】(前編)

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中岡正三

(年齢:60代 出身:高知県) 水産系の大学を卒業後入社、工場長を務めたのち2003年より代表就任。美味しいものづくりにこだわったヒラオの味をKaoriでお届けします。学生時代はアーチェリー部に所属、ゴルフを経て現在は釣りに没頭中。

【Kaori-熏】で販売中である漢魂プレミアムスモーク5種のパッケージが並んでいる。

【Kaori-熏】で現在販売中の【漢魂プレミアムスモーク5種】は「日本ギフト大賞2021都道府県賞大阪賞」を受賞している、贈り物としても人気の高い商品です。実はこのセット、天正遣欧使節顕彰会が2018年9月にローマ教皇に特別謁見した際の、ローマ教皇への献上品であることはご存じでしょうか?そしてなんと!特別謁見には私も同席していたのです。

きっかけは【漢魂スモークかんぱち】を見初めていただいたことでした。もう4年ほど前のお話になりますが、なかなか経験することがないであろう出来事でしたので、当時の事を思い出しながら記録しておこうと思います。

はじまり

2017年12月、「いま大阪にいるんだけど事務所にお邪魔してもいいかな」という電話があり、宮崎県の丸栄水産株式会社(現マルエイ水産株式会社)の大野社長が突然来社されました。

丸栄水産株式会社は日本で初めてカンパチの養殖を成功させた会社です。特別な飼育法により養殖魚特有の魚臭さがなく、旨み・甘未成分の数値が高いとても美味しいカンパチを育てています。

丸栄水産(株)が育てる、特別な飼育法により養殖魚特有の魚臭さがなく、旨み・甘未成分の数値が高いカンパチが、たくさんの氷の上に置かれている。

そのカンパチを自社で燻製して販売されていたのですが、もっと美味しい燻製にしたいという思いがあったとのことで、燻製を専門にしている当社が人づてに紹介されて試作を依頼されました。

当社で燻製を作ったところ「これはうまい!」といたく気に入っていただき、それ以降10年来のお付き合いがある会社です。

(株)ヒラオの社長中岡(左)と、長いお付き合いをさせていただいている丸栄水産(株)の大野社長(右)が、半分背を向けて腕を組み、海を眺めている。

応接室のソファーにドカッと座った大野社長は「何から話そうか・・・」となかなか本題に入りません。

少しの沈黙の後に出た言葉は、「結論としては、ヒラオさんのカンパチの燻製をローマ教皇に献上することになったから作ってくださいね」。

・・・恐れ多い単語が聞こえたような気がします。ローマ教皇って?あのローマ教皇??どういうこと???サラッと言われましたが、突然のとんでもなさ過ぎる内容に私の頭の中は「???」の大混乱です。

改めて詳細を伺うと、宮崎の『天正遣欧使節顕彰会』という団体が来年(2018年)バチカン市国でローマ教皇に特別謁見する際の献上品として、ヒラオで作ったカンパチの燻製が選ばれたということでした。

ローマ教皇に献上してもらえるのにお断りする理由なんてありません!

もちろん二つ返事で「よろこんで!」と了承したことが始まりでした。

天正遣欧使節顕彰会(天正会)

ここからは少し歴史のお話。

皆さんは『天正遣欧少年使節』をご存じでしょうか?

一般には伊達政宗が派遣した慶長遣欧使節の方が有名なようですが、それよりも30年も前にヨーロッパに渡った4人の少年たちがいました。

日本初の公式の使節団として、ローマに向かった天正遣欧使節の中心となった4人の少年たち。

九州のキリシタン大名の名代として4人の少年を中心に日本初の公式の使節団としてローマに向かったのが天正遣欧使節です。

彼らが長崎から出発したのが1582年、本能寺の変があった年です。

ヨーロッパで大歓迎されて当時のローマ教皇に謁見し、さまざまな知識や文化を勉強しローマの市民権まで与えられたものの、1590年に長崎に帰ってきた時には豊臣秀吉の時代になっており、バテレン追放令が出てキリシタンへの弾圧が始まっていました。

キリスト教弾圧の中、棄教したり病死や殉教死などで十分な活躍は出来なかったと言われています。

そのため彼らが日本からの公式な使節として初めてヨーロッパに日本と日本人を知らしめ、活版印刷機、海図などを日本に持ち帰りヨーロッパの文化を日本に伝えた功績はあまり知られていません。

4人の少年たちのリーダーだった伊藤マンショは現在の宮崎県西都市の出身で、出生地の都於郡城(とのこおりじょう)の城跡にはマンショの銅像が建てられています。

都於郡城の城跡に建てられている伊藤マンショの銅像。

彼らの功績を世に知らしめたいと宮崎県で活動しているのが『天正遣欧使節顕彰会(天正会)』です。

天正会の理事長が、1586年にヨーロッパで出版された「天正遣欧少年使節記」(少年たちに同行していた神父さんがつけていた日記のような記録)を日本語訳して出版しようとしていることや、社会貢献などが認められて今回の特別謁見がかなったとのことでした。

天正会では県の特産物をローマ教皇への献上品にすることで注目を集め、地方創生のひとつの手段として役立てようとしていました。

行政に働きかけていましたが相手にしてもらえず、ならば民間の力でと一般企業に声をかけていきました。

その中の一社が丸栄水産株式会社です。

丸栄水産(株)の大野社長は天正会の理念に賛同して協力することになりました。

天正会の理事達が、丸栄水産(株)のカンパチ養殖場を見学に訪れた際に振舞われたカンパチ料理の数々を召し上がり、理事長が「これは絶品!これを献上品にしよう!」と仰ったのが、当社が作った燻製だったそうです。この時にはまだ「漢魂(かんたま)」の名前はありませんでした。

和風のざらざらした、黒くて丸いお皿に盛りつけられた漢魂スモークかんぱち。

その後、理事長が翻訳でお世話になっている数名の神父さんやイエズス会の東京本部の方々にも食べていただき、皆さんの了承を得たことで献上品に正式に選ばれたということでした。

ローマ教皇特別謁見

ローマ教皇に謁見する方法にはまず【一般謁見】があります。毎週水曜日にサン・ピエトロ広場で行われるミサに特別席で参加すると、ミサが終わった後にローマ教皇が席の前を歩いて行かれるので、ローマ教皇が側に来られた時に献上品をお渡ししたり、少しお話が出来るというものです。

よくニュースなどで見る、屋外でローマ教皇が市民に囲まれ子供にキスしているような映像がこの一般謁見のシーンで、広島市長や長崎市長がローマ教皇に謁見して訪日のお願いをしたのも同じ一般謁見と言われるものです。

今回我々はミサの前に時間をとっていただき、お会いして直接献上品をお渡しできる【特別謁見】という方法で謁見する機会をいただけました。

これは国賓、大臣クラスの方と同じような扱いで、日本の民間としては初めてのことだったそうです。

特別謁見に出席できる人数は決められており、理事長、理事、神父さん、大学教授、そのほか献上品に関わる会社から数名のみ。宮崎の会なので出席されるのは宮崎の方ばかりですが、その中に大阪から1名滑り込んでバチカンに同行することになりました。

更に、「ヒラオさんが行くのならカンパチだけでなく、他の燻製も持って行きましょう」という話になり、メイドインジャパンとして国産原料を使用した燻製にこだわって誕生したのが【漢魂プレミアムスモーク5種】です。

日本酒を添えて、5つの和風でざらざらした、黒くて丸いお皿に盛りつけられた、漢魂プレミアムスモーク5種。

「漢魂(かんたま)」という商品名は漢(生産者)達が魂を込めて作ったという意味で、原料生産者の方の思いや燻製にかけた思いを伝えることが出来ればと思って名付けました。

【Kaori-熏】で販売中の漢魂プレミアムスモーク5種の商品画像。金・紫・赤・緑・ピンクの5つのパッケージに、白と黒の背景に桜の花びらと、金の輪をあしらったデザインの専用化粧箱。

→後編に続く

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中岡正三

(年齢:60代 出身:高知県) 水産系の大学を卒業後入社、工場長を務めたのち2003年より代表就任。美味しいものづくりにこだわったヒラオの味をKaoriでお届けします。学生時代はアーチェリー部に所属、ゴルフを経て現在は釣りに没頭中。